前回Squier byFender表記のストラトキャスター(ストラトくん)のボリュームポット、トーンポットの記事を更新しました。
その際に軽く触れましたSquierもとい、FenderJapan(フェンダージャパン)の軽い歴史も触れましたが、今回はそのSquierとFenderJapanの歴史を少し紐解いていきたいと思います。
FenderJapanが生まれたきっかけ
日本で巻き起こったバンドブームの存在
第一次バンドブームの到来

FenderJapanを語るにはまず、バンドブームの存在がとても大きいです。
1960年代サーフィンミュージックの流行によりエレキブームが日本で巻き起こりました。一部ではこのエレキブームを第一次バンドブームと呼んでいます。
この第一次バンドブームの際に流行したのがザ・ベンチャーズなどのインストゥルメンタルバンドです。
この当時の主流楽器は今回の主役FenderJapanの親会社、大手楽器メーカーのFenderやGibsonのエレキギターやRickenbacker、モズライトなどでした。
65年にはベンチャーズが再来日に伴いそこで一旦第一次バンドブームは落ち着きを見せ始めます。
その後はGSブームとともにフォークソングが流行りを見せ始めます。
当時の時代背景上、エレキギターは高価なものが多く、一般人に手を出すのは至難でした。
ですが、テレビ番組などでもフジテレビ系では「勝ち抜きエレキ合戦」という番組もやっており、身近な存在になりつつありました。
第二次バンドブームの到来
20年ほど時が経ち、1980年代にはバンドブームの再来です。
このバンドブームを第二次バンドブームと呼ばれていたりします。
主にこの当時に流行ったバンドを上げると今でも記憶に残っているバンドや現在も活動を積極的に行っているグループが多いイメージがあります。
バンド名 | 活動時期 |
サザンオールスターズ | 1977年〜現在 |
RCサクセション | 1968年〜1991年 |
BOØWY | 1981年〜1988年 |
レベッカ | 1984年〜現在 |
TM NETWORK | 1983年〜現在 |
米米CLUB | 1982年〜現在 |
プリンセスプリンセス | 1983年〜2016年 |
THE BLUE HEARTS | 1985年〜1995年 |
UNICORN | 1986年〜現在 |
FenderJapanの誕生

長い前フリになりましたが、いよいよ本題のFenderJapanが生まれたきっかけ、そしてその時生まれたSquierというブランドの誕生についてお話していきたいと思います。
第二次バンドブームを迎えた日本は、今ではジャパンビンテージと呼ばれている国産メーカーの努力が詰まっていた時代です。
今ではある程度名前の知れているTokai製Talbo(タルボ)などもこの時代生まれになります。
国産ギターメーカーのコピー品の製造
さて、第二次バンドブームが盛んになりましたが、第一次バンドブームと同じく大手メーカーの楽器は高すぎて庶民には手が届きません。
そんな中、国産メーカーはこぞって大手メーカーのコピー製品に着手しました。
今では国産有名メーカーと呼ばれている、フジゲンや東海楽器(トーカイ)、フェルナンデスなどがこぞってGibsonやFenderのコピー製品の販売に取り掛かっていました。
もちろん、大手楽器メーカーも黙ってはいません。
自社が開発したギターを他社の楽器メーカーがコピーして更に安価に販売するなんてことを見逃してしまっていては、大手楽器メーカーも苦しくなってしまいます。
また、コピー品とはいえトーカイ製のギターは本家を超えていたとも言われており、各メーカーの本気が伺えます。なのでこの時期ヴィンテージギターは今でも人気があります。
そんなこともあり、フジゲン含めた国産メーカーはGibsonに訴えられてしまいます。
Fenderが考えた対策

Gibsonと同じく日本でのコピー品の流通に悩んでいたFenderは、Gibsonとは違う方法で対策をします。
それが、各メーカーにFender正規品としての下請け契約を行うことでした。
そうすることによって、国内メーカーは合法的にコピー品の製造ができることになり、そしてFenderも今まで高級路線だったところを、庶民でも比較的簡単に手に入れることができる安価な商品を販売することができるようになったので、企業イメージのアップも図ることができました。
そして、当時フェンダーと共同で会社を作るという話になりました。
その際に共同で出資をするという形になったのが富士弦楽器製造(現フジゲン)、神田商会(Greco)、山野楽器(楽器代理店、楽器店)とフェンダーの4社でした。
そしてこれが株式会社フェンダージャパンの誕生になるのです。
Squierの誕生
こうして生まれたFenderJapan(フェンジャパ)ですが、様々な商品を売り始めることになります。
僕が未だにメインで使っているアンプFender SV-40CEもフェンダージャパンから販売されていた商品でした。
そして、アジアと日本国内をメインにSquier(スクワイヤー)というブランドを立ち上げることになりました。
その結果、1983年には世界で最もギターの出荷するメーカーとなり、その後フェンダーが経営危機に陥った際、技術支援を行うことになったため、アメリカ国内ではこのフジゲンで作られたFender製品が多く出回ることになりました。
そんなSquierですが、フジゲンのほかにも様々な国内メーカーが製造に携わっていました。
よくギターのヘッドロゴを見るとどこのメーカーで作られていたかがわかることが多いですが、Squierも同じように様々なポイントでどこの製品がいつ作られたのかを判断することができます。
製造メーカーの特定方法

ヘッドのロゴや印字場所によって様々なことを読み取ることができるわけですが、中には例外が存在している場合があります。
製造工程の際に起きたことなどもあるので、公式では大体の製造年、製造場所であることと注意されていたりします。
フジゲン製Squier
フジゲン製のSquierはヘッドにMADE IN JAPANの表記があります。
JV 5桁シリアルナンバー | 1982年~1984年製造 |
SQ 5桁シリアルナンバー | 1983年~1984年製造 |
E 6桁シリアルナンバー | 1984年~1987年製造 |
A 6桁シリアルナンバー | 1985年~1986年製造 |
B 6桁シリアルナンバー | 1985年~1986年製造 |
C 6桁シリアルナンバー | 1985年~1986年製造 |
F 6桁シリアルナンバー | 1986年~1987年製造 |
G 6桁シリアルナンバー | 1987年~1988年製造 |
H 6桁シリアルナンバー | 1988年~1989年製造 |
I 6桁シリアルナンバー | 1989年~1990年製造 |
J 6桁シリアルナンバー | 1989年~1990年製造 |
K 6桁シリアルナンバー | 1990年~1991年製造 |
L 6桁シリアルナンバー | 1991年~1992年製造 |
M 6桁シリアルナンバー | 1992年~1993年製造 |
N 6桁シリアルナンバー | 1993年~1994年製造 |
P 6桁シリアルナンバー | 1993年~1994年製造 |
Q 6桁シリアルナンバー | 1993年~1994年製造 |
S 6桁シリアルナンバー | 1994年~1995年製造 |
T 6桁シリアルナンバー | 1994年~1995年製造 |
U 6桁シリアルナンバー | 1995年~1996年製造 |
V 6桁シリアルナンバー | 1996年~1997年製造 |
フジゲンは1997年にフェンダーから撤退をしてからはFender製品の製造をやめてしまいました。
その後は自社ブランドのFGNなどを立ち上げたり、島村楽器の自社ブランドHistoryやCoolZの製造などを行っています。
ダイナ楽器(神田商会)製のSquier
ダイナ楽器製造のSquierにはCrafted in Japanの表記のものとMade in Japan表記のものがあります。
それぞれ年代が違っていたりするのですが、シリアルコードである程度の製造年が把握できます。
Crafted in Japan
A 6桁シリアルナンバー | 1997年~1998年製造 |
N 5桁シリアルナンバー | 1995年~1996年製造 |
O0 5桁シリアルナンバー | 1997年~2000年製造 |
P0 5桁シリアルナンバー | 1999年~2002年製造 |
Q0 5桁シリアルナンバー | 2002年~2004年製造 |
R0 5桁シリアルナンバー | 2004年~2006年製造 |
S0 5桁シリアルナンバー | 2006年~2008年製造 |
T0 5桁シリアルナンバー | 2007年~2008年製造 |
Made in Japan
T0 5桁シリアルナンバー | 2007年~2010年製造 |
U0 5桁シリアルナンバー | 2010年~2012年製造 |
JD12 5桁シリアルナンバー | 2012年~2015年製造 |
1995年から製造を始めていましたが、フジゲンが製造から撤退したのち共同出資社の神田商会傘下であったダイナ楽器が引き継ぐ全体を形で1997年から2015年まで製造を行っていました。
さらに、シリアルナンバーNで始まる初期の個体ではCrafted in Japan表記ではなく、MADE IN JAPAN表記のものも存在しています。
そしてFenderJapanはなくなった。

長い歴史の中では衰退と発展を繰り返すことがとても多いです。
それは大手Fenderだってそう。
Gibsonが2018年に事実上の破産をしたように、FenderJapanも消えてしまったのです。
実際FenderJapanは破産とかで消えたわけではなく、楽器製造を行っていた神田商会(ダイナ楽器)とのライセンス契約が2015年3月31日付でなくなっただけなんですが。
1982年から2015年までの約33年間、様々な楽器たちを世に送り出してきたフェンダージャパン。
今ではジャパンビンテージと呼ばれ、安価だがコストパフォーマンスが高いと呼ばれていたそんな時代のギターたちは今でも愛されています。
Fender Made in Japanの誕生
フェンジャパはなくなってしまったんだ。
そう思った君、安心してほしい。
そんな君のためにご本家Fenderは新しいシリーズを作った!
それがFender Japanシリーズだ!
はい。
日本製のフェンダー製品といえば、FenderJapanが有名ですが、そのフェンジャパも2015年になくなってしまいました。
ですが、ご本家FenderもMade in Japanの表記が忘れられなかったのでしょう。
今回はSquier byFenderではなく、正真正銘FenderとしてMade in Japanを作るためにJapanシリーズという新シリーズが本家Fenderから発売されることになりました。
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Squierのその後
FenderJapanがなくなったのち、ご本家Fenderがブランドを引き継いで残っているので現在もSquierロゴのギターは販売されています。
そして、今なおコストパフォーマンスが優れている楽器を製造しており、日本国内だけではなく、全世界でも利用ユーザーが多いブランドにまで成長しました。
FenderJapan時代の名器を紹介。
最後に完全に僕の好みも入り混じってきますが、FenderJapan時代に販売されたギターたちと、今もなお愛されているギターたちを紹介していきたいと思います。
ムスタング MG-69
某アニメでも有名になったFender mustangは1964年に発売されたショートスケールのギターです。
当初はスチューデントモデルとして販売されていましたが、ほかのスチューデントモデルと違い、トレモロユニットが搭載されていることが売りでした。
1986年からはフェンダージャパンからリイシュームスタングが発売され、今なお人気のある機種となりました。
ジャガー JG-66
1962年に発売されたジャガーは当時フェンダーの最高級機種でした。
ジャズマスターとボディーシェイプがよく似ていますが、スイッチやショートスケールのネックを使用していたりしています。
フェンダージャパンでは1986年から製造されており、1990年代にはニルヴァーナのカート・コバーンが使用したことによりオルタナ系のロックシーンでは人気を博しました。
ストラトキャスター ST-57
エレキギターの代表的な存在である、ストラトキャスター。
製造は1954年から続いており、1966年にはジミ・ヘンドリックス(ジミヘン)の登場によりロック用エレキギターとして注目されました。その後もエリック・クラプトンなど様々なアーティストが手にしており、Fender以外のコピーモデルの製造を行っているメーカーから販売されているモデルです。
Squier サイクロン
1997年から2006年までFenderにて製造されていたサイクロンは当初はメキシコのエンセナダ工場で製造されていました。
ボディシェイプはムスタングに似ていますが、シンクロナイズド・トレモロを搭載するために厚めに作られています。
2004年からはSquierから発売されており、2009年の一部個体のみ日本限定で復刻販売されているものも存在しています。
最後に
とても長くなりましたが、いかがだったでしょうか?
この記事を読んで少しでもFenderJapan、もといフェンジャパの魅力を少しでも伝えることができていたら幸いです。
そして、この記事内の間違っていた情報などがあった場合はコメントやお問い合わせフォームから連絡をお願いします。
ぜひ楽器店でフェンダージャパンの当時のギターを見かけた際は、試奏をしてみてジャパンビンテージの良さを体験してみてください。
そして買ってみてください。多分気に入ると思います。
Chroでした。
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